「LOVERS」(ラヴァーズ) 

恋愛小説アンソロジー(祥伝社)

お手軽な商品は失礼


恋愛小説のアンソロジー。
著者は江國香織、川上弘美、谷村志穂、安達千夏、
島村洋子、下川香苗、倉本由布、横森理香、唯川恵
の9人。

前から3人が好きな作家なので読んでみた。
こういう企画物でもいい本はあるんだけど、
結論から言えば大したことのない作品集だった。
オール書き下ろし&オリジナル(どういう意味なのかいまいち不明)
ということだが、何か消耗品っぽい内容だ。

江國香織は彼女らしい作品。
クオリティは保ってるけど、新味はない。
彼女の描く恋愛はたいてい全身全霊で、闘争的で、
正しいことに通りすぎて去って行ってしまうものだ。
ただし、この中ではオリジナリティーがあって、やっぱり読んでしまう。

川上弘美は意外な作品を書いていた。
彼女の独特な世界じゃなく、「今」の人。何だか江國香織みたいだ。
センスがよくて、リズムがよくて、「今」を映してるかもしれないけど、
彼女が書く理由がないような。
(彼女の作品を読んだことのない方は、
最近「椰子・椰子」というのが新刊文庫で出てるので
読んでみてください。)

谷村志穂
この人は一行レビューでも書いたけど、
小説はそんなにいいと思わないのだ。
この作品も悪くないけどね、止まり。

島村、下川、倉本、唯川の4氏は、かのコバルト文庫出身者。
コバルトにも名作は多いと思うけど、
島村洋子はともかくとして、その他の人々の話は
どっかで読んだようなどうでもいい少女マンガみたい。底が浅いぞ。
特に倉本由布のはあんまりだ。できの悪いファンタジー系の芝居の設定みたい。

でもみんな売れっ子なんだよね。唯川恵なんか特に。
しかし、「自分を高める」系のエッセイとかって私も嫌いじゃないけど、
底の浅い人生論は読んでて恥ずかしい。
この人にもそういうのを書くのはやめなさいといいたい。

エンターテイメントって大事なこと。
私が本当に一番好きなのもそのジャンル。
特にサラリーマンになってからは読書傾向がよりそっちにシフトした。
活字好きはいつだって読んでいたいんだけど、
毎日顔に縦線はいるようなハードなものばっかり読んでたらやってけない。
(まあやってける人もいるでしょうが)

手軽なスナック菓子みたいな作品も愛してる。
だから、手抜きしないでもらいたいんだな。
そして、読む側ももっと楽しむことにシビアになってもいいんじゃないの。
サポーターがチームを育てるように、
読者が作家を育てるという側面は確かにあるんだから。

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