「超・殺人事件」 

東野圭吾 新潮社

〜推理作家としての東野圭吾

ミステリ好きにはきっと、にやにやできる面白さ。

超税金対策殺人事件
超理系殺人事件
超犯人当て小説殺人事件(問題篇・解決篇)
超高齢化社会殺人事件
超予告小説殺人事件
超長編小説殺人事件
魔風館殺人事件(超最終回・ラスト五枚)
超読書機械殺人事件

この8篇。ね、面白そうでしょ。

すべて作中作が出てくるという凝った構造。
作者の力量を感じさせられる。
最近は純粋ミステリ以外での呼び声が高い作者だが、ここではミステリ作家としての顔を見せてくれる。
しかし器用な人である。
その器用さが今一つ馴染めない、というのは個人的な話。
「超読書機械」は書評をしてくれる機械の話。最近書評に近いことをここでしてるので、その便利さが身に迫って感じられて笑ってしまった。読み手のためにはあらすじや内容紹介をすべきなんだと思うが、これが結構難しいんである。(あまりやってないけど)

以下感想。

もっと特定の実作のパロディ(京極夏彦の「どすこい(仮)」みたいな)っぽいものかと思ってたのでその辺は予想外。私がわからないだけかもしれないが。
例えば「理系」といえば森博嗣、「長編」といえば京極夏彦がすぐ浮かぶので。
長編には笠井潔なんかもいるけど。彼の「哲学者の密室」は講談社ノベルスなんか目じゃないくらい厚いです。寝転んで読むものへのアンチか?

どちらかといえば、清水義範のパスティーシュに似た味わい。
っていうかすごく似てると思う。
これはこれですごくありなんだけど、もう少し危ないところまでぎりっと切り込んでほしかったというのはわがままか。帯に踊らされてしまったせいかな。
面白いことは間違いないんだけどね。

しかし、今日本屋で森博嗣の新刊エッセイに「新明解国語辞典より厚い!」という帯が…。
「超長編小説」そのままの世界が現実になっておりました。
やっぱ、外野にはわからないけど結構危ないセンまで書いてあるのかな。

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