装丁物語

和田誠(白水社)

本の「顔」の作り方を楽しむ

 ところで、あなたは本をどうやって保管してますか?本にはカバーがあり、その上にたいがい帯があり、さらに書店のカバーで包まれていたりする。カバーを捨てちゃうという人もいるみたいだけど、私はあまり見たことがない。最近は減っているのでは? 書店のカバーの背にペンでタイトルを入れて、本棚に並べている人がいて、見たときはちょっとびっくりした。大切にしてるということなのかな。
 まあ、人それぞれだと思うのだけれど、一度はカバーをはがして表紙まで見てみよう。装丁家は、きちんとした本ならばそこを考えて作っているし、時々はカバーの裏にまで仕掛けがあったりして、いろいろな発見ができること請け合いだ。 

 この本は、和田誠が本の装丁の仕事について、この時点で語り尽くした本といっていいだろう。
 ちなみに、装丁というのは、本の表紙やカバー、帯などのデザイン、作成の仕事です。もちろん、判型、紙の種類、文字の組み方なども含むけど、どこまでが領分かはその時々。
 著者は有名なイラストレーターで、装丁家で、映画監督だったりもする。(新作公開してますね―20018月現在)特徴のあるイラストと書き文字は、多分誰でも見たことがあるはず。この本は、編集者に語りおろすという作業がベースになっているので、文章も「語り」に近く、読みやすい。
 こうやってまとめてみると、実にたくさんの本の装丁をしているのだけれど、演劇関係の本もたくさんある。最近では三谷幸喜ともよく組んでいるし、つかこうへいの戯曲、ニールサイモンの戯曲集などもこの人。
 作品をすべてゲラ(本になる前のもの)で読んでから仕事をするという彼が、それぞれの本をどう装丁するかは、この人の「読み」の表現でもあるわけで、そのあたりの話も面白い。それにしても、すべての本を読むというのは、本来当然かもしれないけど、どのくらいの装丁家がきちんとやっているのかなあ。
 章立てとして、谷川俊太郎さんの本、丸谷才一さんの本、村上春樹さんの本、などの項目がある。いろいろな本の装丁の写真を見ていくだけでも面白い。いかにも「和田誠」的なもの以外にも、さまざまな作品がある。本当に、その本の内容と丁寧に付き合っていることがわかって感動的だ。
 一冊を通して読めば、装丁という仕事の細かいところまでわかるようにもなっている。

 最後に彼が書いているのが「バーコード」の問題。装丁家としては、バーコードというのはデザイン上受け入れがたいものらしい。当然だけど。それが、大した議論も検討もなしに画一的に決まってしまったことが書かれていてびっくりする。彼は未だにその入れ方について、シールにしてもらったり位置を工夫したりと苦闘しているのだが、そのことで装丁の仕事は激減してしまったらしい。
 めんどくさいこというなら頼まない、ってことなんでしょうね。なんというか、業界の文化度の低さを感じてしまう話ではあります。
 彼のような巨匠なら、出版社側も、そのこだわりを呑んででも、という場合も多いだろうが、有名ではなくてもこだわりを持ってよい仕事をしようとしている人などは、どうなってしまうのだ。
 現場に対しての理解を欠く人たちが、大切なことを決めてしまうというのはどこの世界でも同じなのか。大事なことを失ってしまわなければいいのだけれど。

 装丁についての本は多くはないが、菊池信義の「装丁(本当は難しい方の漢字。何故か今変換できない)談義」(ちくま文庫)も似たような本。和田誠とはまた違った著者の個性があって面白い。こちらの方が系統的に装丁について語っている。
 装丁家としては、司修、ミステリ系の辰巳四郎なども好きです。しかし、辰巳さんはゲラを読んでいられないと思うのだが。大変な仕事量で、しかも質が高いのはすごい。森博嗣の講談社ノベルスは、初め装丁で買いました。

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