「私の寄港地」
今江祥智(原生林) 〜バーボン「メイカーズ・マーク」のような上質さ〜 まず、装丁がいい。薄鼠色の箱にスカイブルーで縁取られたタイトルの紙が貼られている。 中身を出すと、白い地に銀色で小さくMY FAVORITE THINGSと印されている。 軽身のフランス装。大事にしたくなるつくりだ。 見開き2ページで一つのエッセイ。 一つ一つについている宇野亞喜良のイラストが素晴らしい。 登場する人の顔が多い。やわらかく温かみのある筆遣いが本文とぴったりあっている。 贅沢な本だ。 産経新聞に連載されたエッセイをまとめたもの。 作者の「寄港地」である、場所、もの、人についてゆったりと語られる。 少しずつ、ゆっくり読んでいくのがいい。 読んでいる間は、何だか時間がゆっくり過ぎていく。 京都弁はやわらかくていいなと思う。 交友関係などが見えてくるのもファンには楽しい。この人の友人は本当に多彩。 作者を知らない人でも、数篇読んでみて興味が持てたら、ぜひ作品を読むことをお薦めする。 同じ息遣いでゆったりと大きな世界を広げて見せてくれるはずだ。 70歳と聞いて驚く。 あといくつ新しい作品を書いてもらえるのかと心配になったりして。 しかし、本書を読むとまだまだやってくれそうである。新作が楽しみだ。 昔、池袋西武の本屋リブロで今江さんの本を買ったら、レジのお姉さんが、 「やっと新作でましたね!お好きですか」 と嬉しそうにいうので、はい、と答えると、 「頑張って、読みつづけましょうね!」 と力強くおっしゃった。珍しい体験。 彼女はどうしているだろうか。 今江さんも頑張って書きつづけている。私も読みつづけます。 |