「じつは、わたくしこういうものです」
クラフト・エヴィング商會(平凡社) 〜どこかにあるかもしれない職業〜 19人のポートレート。それぞれが自分の職業について語っている。 しかしその職業というのがいずれも不思議なものばかり。 「月光密売人」「秒針音楽師」「果実勘定士」などなど。 メルヘンチックだと思われるかもしれないが、これがそれぞれのポートレートのせいで、 何だか本当らしく思えてきてしまうのだ。そんな力強い写真だ。 雑誌「太陽」連載時にも、そんなわけで、騙されて問い合わせをしてくる人が多かったらしい。 そのせいか、巻末には「じつはわたくし本当はこういうものです」という、モデルの素性を明かした解説篇がついている。 確かに中の一人が小川洋子だったりすると、後の人は誰なんだろう、などと思ってしまうわけだけど、急いで種明かしをしてしまうのも何だかもったいないような。 騙しっぱなしでいいんじゃないか、と思ったりするのだ。 しかし、問い合わせが絶えないという「シチュー当番」。私も気に入りました。 春と夏に思いっきり働いておいて、冬は冬眠図書館で冬眠するように本を読む。本の友はシチュー。 なんて素晴らしいんだろう。 |