「ライ麦畑でつかまえて」
J・D・サリンジャー(白水社Uブックス) 〜世界に対する違和感〜 青春文学として名高い一篇。勝手に夏っぽいイメージを持っていたが,ちょっと意外な作品だった。 もっと若くきらきらした世界なのかと思っていたから。 さわやかという言葉が当たるような話じゃない。 小説に「読みどき」ってものがあるとすれば,これは若者の時に読むべき本なんじゃないかと勝手に推測していた。 しかし、今読んだからこそわかる気のする感覚が随所にある。 世界に対する違和感,不適合感。 確かに若い私もそういうことを感じていたが,どこかでそれは解決されるべきものと思っていた。 クリアな世界が存在するような幻想を持っていた。 しかしこの違和感は根源的なもので,目をつぶらない限り解消される事はない。 ある意味目を閉じるとは大人になることと同義かもしれないが,現代の大人はそう簡単に目を閉じる事はできない。 正しい世界という共同幻想はもはや存在しないのだから。 ここで、世界への違和を語る青春文学は年齢を限定しない普遍的なものとして現代に認定される。 主人公ホールデンは通りすぎた時代の影ではなく,今の我々の肖像となった。 っていうのはちょっと乱暴か? うん,いささか強引過ぎますね。 でも,そんな感じがするくらい部分的に近いものを感じたのは事実。 個人的な問題かもしれませんが。 なんだか全然きちんとした紹介にも感想にもなってないな。 どうもまとまらないので,続きは村上春樹訳が出てからということで。 訳文は名訳だとか悪訳だとかいろいろ言われているようですが,なじんでしまうとリズムがあって悪くないと思えてくる。ところどころ、「これはどういう原文なんだ」と気になってしまうところはあるけれど。だいたい訳文って賞味期限つきなんじゃないかな。特に話し言葉なんかは。 しかし、この邦題はなんかちょっと恋愛ものっぽいと思いませんか。 |