「ラグビー愛好日記トークライブ集 2」

編・著 村上晃一(ベースボール・マガジン社)

〜ラグビーな人たちの魅力〜


あたたかい本である。
表紙のクマは編著者をイメージした手づくりなのだとか。
そのハンドメイドのぬくもりが,そのままこの本の風合いだ。

三鷹・文鳥舎でのトークライブを収録した2冊目。

今回のテーマは「温故知新」ラグビー界のパイオニアレジェンドなど歴史を知る人々が
ゲストとして多く登場する。各章のタイトルが端的にゲストを表しているのは前巻同様。

1無償の愛 大西アヤ
 (名将大西鐵之祐夫人。闊達で輝いている)
2パイオニア ノフォムリ・タウモエフォラウ
 (外国人初日本代表となったトンガ人)
3博士再登場 小林深緑郎
 (ほのぼの感を漂わせる博識ラグビージャーナリスト)
4桜の誇り  大西将太郎
 (前回W杯で大活躍の現役選手)
5レジェンド 坂田好弘
 (世界のレジェンドプレーヤーに選ばれた日本人ウイング)
6農的ラグビー愛 田辺登
 (書籍オリジナルゲスト。サモアで農業とラグビーを教えたラグビーマン)

非常にリーダブルで,ラグビーに明るくない人でも楽しめるという点では、前回以上の
章が多いかもしれない。
難しくあれこれいう必要もない本だなあと思う。
楽しんで読んでいるうちに、この人々の人生の軸になった「ラグビー」のことが気に
なってしまう。

長くなるのだが、1の中で、大西鐵之祐が「ラグビー」(旺文社)という著作でラグビーに
ついて書いたことが紹介されている。これが滅法面白い。
「ラグビーはプレーするものである。決して見せるものではない。だから見る人も、勝敗とか、面白いとか、華やかだとかを目的とするなら、決して満足した観戦はできないだろう。プレーヤーはなんら観衆のことなど考えていないのだから。彼らはただいかにフェアに自己のベストを尽くしてゲームするか以外は眼中にない。彼らは真にラグビーが好きでやっているのである。だから見る人もまた、何も求むることのない心をしっかりと見てもらいたい。しかし、これは仏心のような「空」の心ではない。もっと人間的な勝利にともなう名声、栄誉、歓喜などを要求しながら、しかしそんなものよりなおかつ、プレーヤーとしていかに立派に、ラグビーマンとしての伝統と矜持にかけて、このゲームをやり通すということに全力を傾注している真摯な選手に拍手を送ってもらいたい。こうした観衆にとり囲まれたゲームこそ、筆者の最も望んでいるものである。観衆が一人でも二人でもよい。こうした愛情の眸(ひとみ)の中にゲームをやれるプレーヤーほど幸福なものはないであろう。」

ラグビーって何なのかなあと、時々思う。種々あるスポーツの中のひとつに過ぎないとも
いえる。だけど何か特殊な感じもする。やってる人、かかわってる人、ファン、そしてこの
本に登場する人すべてが共通してまとう匂い。無論すべてがすばらしいとは思わない。
でも本質的に「熱い」「純粋」「真摯」ということばがやっぱりはまる。
この大西鐵之祐の文章を読むと、改めてそのことを感じる。
そしてやっぱり面白い世界だよなあと思うのである。

「こうして,歴史は語り継がれる。」

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