サロンド体験記1


銀行に行ったら窓口の姉ちゃんが茶髪だった。
びっくりした。
と、同時にちょっと考え込んでしまいましたね。彼女はごくあたりまえに、銀行の世界に溶け込んでいたのですよ。だけどその光景は、私にはなんだか違和感だったのだ。おいおい、いいのかよ……。

私はなにも、「日本人なら黒髪を大事にせよ」とか、「銀行員に茶髪はまかりならぬ」的、政府広報局的提言がしたいのでは、ないのです。考え込んでしまったのは、それ(銀行員の茶髪)を『いいのかよ』と思ってしまう自分がいるコトに対してなのだ。つまり、これは精神的『老化』ではないのか、と。

私も30代半ば。これは由々しき問題なのだ。例えば昨今のケータイ文化にはちょっとついていけないしね。去年やった芝居で、、ケータイをモチーフに選んだ関係で、今私の手元にはツーカーが一台あるのだけれど、その後ほとんど使われたコトはない。携帯メールは使い方すら知らないし。

結局新しいモノに対する許容度が低くなってるってコトなのだ。社会の変化に対する適応力が鈍くなっている。それは、まさに精神の『老い』ではあるまいか……。

これは、イカん。
茶髪レディから通帳を返してもらいながら、このままではイカんと考えましたね。精神の自由を取り戻すために、ここはなんとかせねばなるまい。なんとかする、そのなんとかが何かと言うと、

私も茶髪にすることにした。

そうなのだ。精神の自由にはやっぱり茶髪だよね。この結論、今となってはよくわからない因果関係なのだけど、ともかくその時はそう思ったのです。いやはや、世の中に『思い込み』と『勢い』ほど恐いものはない。

かくして銀行を後にした私は、強い決意をもって近所の美容院へと向かったのだった。
35才にして、初めて美容院のドアを潜る、しゅさいの運命やいかに……。

(以下、次号)

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