シチュエーション・コメディの技術とは?



昨日は劇団ワークショップ、初日。
ほんの去年から始めた試みなのだけれど、なんだかもうすっかり定例化してしまった気がしてくるから不思議なのだ。今回、申し込みをいただいた外部役者さんは9名。そのうち6名の方に初日から参加していただけた。個人的にワタシ一人で対処できる人数となると、そのあたりが限界なので、今日はある意味、理想的な人数。これにうちの役者が7人ほど参加して、稽古場は結構な賑わいになった。

今回のテキストは、二人芝居の「フェイク」。
4年ほど前に、ワタシがとあるプロデュースユニットのために書き下ろした二人芝居なのだけれど、実はこれ、厳密にはコメディ作品とは言えないモノ。(笑いのシーンも沢山あるにはあるけど)
ではなぜ「コメディを演じるための技術」なんてテーマなワークショップにこの作品を使うかと言えば……これはやっぱり、演技の基本は「二人」芝居にあると思うからなのですね。自分と、相手役の二人だけ。自分がアクション、リアクションしなければ何も生まれない世界で、かつ相手がいる。コメディ演技の基本も当然、そこにあるハズ。

今日は初日なので、まずは技術論みたいなハナシをした。コメディ(の中の、うちの芝居)を演じるための技術とはなにか……いわゆるシチュエーション・コメディの演技が他とどんなふうに違うのか、みたいなコトだ。
そこで演じるのは、ある特定の状況下におかれたジンブツ。おおまかにいえば、その状況(シチュエーション)を正しくカラダに落とす、といったコトがまずは求められるのですね。例えばそれは、浮気がバレそうになっていたり、大金を隠していたり、といった、かなり極端な状況……普通に生きていれば、まず経験したコトのない状況が少なくない。で、乱暴に言ってしまうと、そういう極端でかつ、役者さんにとって過去に経験したことない状況に置かれた人間のカラダというヤツを、リアリティを持ったカラダとして成立させる……なんてコトが、特徴的に求められる技術なワケです。ただ成立させるだけじゃなく、面白さを生み出しながら。


うちの芝居を観たコトある人が、普段のうちの稽古場にくると、びっくりされることが多い。なにせ「笑い」を創造する現場のクセに静かなのだ。勿論、誰かの芝居が面白ければみんな笑うけど、でも大半の時間を、その状況に適したカラダの獲得のために費やしているから、自分らが笑っている暇はあまりないのです。ただ、黙々と作業をこなすように、その状況下のセリフやカラダを自分に落としていく。うまく成立しない場合は、どうすればいいかを考え、成立した時は、より面白い成立のさせ方を考えて。

ワークショップの場合は、参加者はうちの芝居の経験者ではないコトが多いので、そこまで極端なコトにはならないのだけれど、まあ、似たようなコトにはなってしまう。勿論「コメディを演じる楽しさ」がテーマのワークショップならばワタシもやり方を変えるけど、「技術」を求めて来られた方には、正しく創造の場に参加していただきたいと思う。(その方が絶対に身になるし)その上で、コメディ創りの楽しさを感じてもらえたら……主催側としてはこんな嬉しいコトはないのだけれど。

さて、今回。
初日はどうしてもホン読み中心になってしまうのだが、集まっていただけた方々の意識は、かなり高いようで、貪欲なまでの集中力……みたいなモノを感じたのだった。ワタシの、「そこの部分はこうしてみようか」なんて指示に対する反応ももかなり良い。来週からの、シーン稽古で、どんなカラダを見せていただけるのか、ちょっと楽しみになってきたのだった。


戻る