明智小五郎対怪人二十面相 TBSテレビドラマ(鑑賞02年8月27日) 久しぶりに、企画で観たくなったテレビドラマ。明智が田村正和で二十面相がビートたけし。 雰囲気ドラマ。江戸川乱歩の世界観のドラマ化。トリックや推理モノとしては大したことなくても、その世界観がドラマの成否を分ける。お金もかけてるし、丁寧な作りも好感。ただし……やはりビートたけしの二十面相は無理があるのでは。なんだか普通のオッサンに見えてしまって、知的でもないし、不幸な人生観もいま一つ。 改めて感じたのは、……例えば二十面相って怪盗ルパンがモデルだと思うのだけれど、平気で人殺しをしたりして、ちっともスマートじゃない。ゲーム性よりは恨みつらみや「浪花節」の方が大事。これ、やっぱり日本人的。どろどろネチネチした世界観がやっぱり好きなんだなぁ……と。 たまたま読んだ宮崎駿のインタビューにもそう書いてあった。うーん、考え込んでしまうなぁ。 ポセイドン・アドベンチャー 映画・ビデオ(鑑賞02年8月27日) 個人的にパニック映画ブーム。単なるパニックモノに納まらず、被害にある人間を巧みに描いていて、良質。 サバイバルゲーム。生死を分けるのは、窮地に陥った時、つい出てしまう個人の性格。動く人、動かない人。で、面白かったのだけれど不満に思ったのは、「生きるために、行動を起こす人」が最後に生き残り、「動かなかった」人がみな死んでいくこと。たぶんジンセイはもう少し複雑。でも映画だからこれでいいのか、とも思う。 (※後記 先の韓国の地下鉄放火事件では、まさに生き残ったのは「動いた」人らしい。車内に「動かず残った」人は殆ど生き残れなかった。何がリアルかを見抜く目が、ワタシもまだまだ甘いと言うコトか) 名探偵コナン 世紀末の魔術師 映画・ビデオ(鑑賞02年8月26日) 怪盗キッドを捕らえる前半部と、古城に眠る秘宝を巡る後半部の二つのお話。 劇場用映画としての盛り上げ方はうまいと思いながらも、その二つがなにかうまく溶け合いきっていない居心地の悪さを感じてしまった。暗号解読などディティールはうまく作ってあって、楽しめた作品だけに少々残念。 ダイハード 映画・ ビデオ(鑑賞8月24日) 鑑賞三度目。タワーリング……を観たら観たくなった。 やっぱり、比較すると事件の起こり方がキビキビと早い。一難去ってまた一難。ホンとして優秀。 タワーリング・インフェルノ 映画・ ビデオ(鑑賞02年8月24日) 閉ざされた空間内のパニック映画。閉ざされたといっても超高層ビルが舞台だから写す絵は沢山。後々コナンがパクった原案も幾つか見えて、それなりに楽しめた。 悪役なき映画。モチロン、火災を起こす原因はビルの手抜き工事だったりして、その利権をむさぼった悪役は存在するし、脱出の順番を巡り、自分だけが助かろうとする……などのパニックものならではの悪役はいるのだが、例えばダイハードのような悪意による事件は存在しない。全般に作りがストイックな印象。 ビル火災が起こり、それが事件に発展して、さあどうしようになるまで30分強。やはり昔の映画は「起こり」までがのんびり。後々効いてくる伏線などあるから、これはこれで良いのだが、やはり少々のんびりした印象にはなってしまう。2時間半強の長尺モノ故に、伏線の張り方ものんびり。どっちがいいかは……うーん。 名探偵コナン 瞳の奥の暗殺者 映画・ビデオ(鑑賞02年8月23日) コナン映画の第一作らしい。暗中模索の中で作られた印象。シリーズでもっとも凶悪な犯罪という触込みで、刑事連続殺人などが描かれているが、事件も映画としての派手さも中途半端な印象。 何より脚本がよくない。子供用の劇場公開作品だからか、もしくはそれにまだ慣れていない原作者のためか。最新作に比べて少年探偵団の扱いも小さく、中途半端。マニアの評価は知らないけど、新作の方が面白かった。 名探偵コナン 天国へのカウントダウン 映画・ビデオ(鑑賞02年8月19日) これも仕事の関係で観た映画。原作漫画はそれなりに読んだコトあるのだが、アニメは初見。 結構良質に創られた作品。原作は青山剛昌というコトになっているが、脚本の字幕はなかったので、どういう経緯で創られた作品かは不明。おそらく絵コンテ優先で作られたのだろう。 アニメの可能性について改めて考えさせられた。コナンは最早、映画にすればある程度の動員を見込める作品。ということは予めかなりの予算が組める。それ故に制作者がまじめに作れば面白いモンになる可能性はあるということ。 ビルを爆破させたり、ツインタワーの最上階同士を車でダイブしたりと、ハリウッド映画的な趣向も満載。これもアニメならではでしょうね。実写じゃお金かかりまくりだろうから。 動画のレベル自体も悪くない。おそらくはかなり予算をかけた模様。普通の(アニメに疎い)映画ツウの方でも結構楽しめるかも。 三つ数えろ 映画・ビデオ(鑑賞02年8月18日) ハードボイルドの名作と聞いて、しかも結末が意外で「落ち」が鮮やかな作品と聞いて、観てみるコトに。 観てみて、ワタシ改めてハードボイルド苦手なコトを確認した。 「マルタの鷹」「用心棒」そしてこの作品。ワタシ的には見事に面白くない。意外な結末とやらも、どうにも前提となっている「謎」自体がよく分からんから、意外というよりは「ああ、そうなの」で終わってしまった。スパイモノも含め、どうもワタシを面白がらせるモンって違うかも。みんなは何を楽しんで、こういうヤツ観てるんだろう……と、皮肉じゃなく、素朴な疑問としてそう思った。作品として優れているかどうか、ではなく、あくまで個人の嗜好として、楽しめるかどうかとして、そう思うのだ。スパイモノもそうだしね。 ダンス・ダンス・ダンス 小説(読了02年7月31日) 村上春樹著 講談社文庫 再々読。もしかしたら4回目くらいか。おそらく前読んだのは10年近く前。大垣行きの鈍行列車に青春18切符で乗った時に読んだ。それ以来。 当時面白いと思ったシーンはよく覚えていた。ゆきと知り合うくだり。五反田君との再会、などなど。 でも話の成り行きはほとんど忘れていた。最後のシーンが、どう着地するかすら。だから、読み進めて行くうちに、話の成り行きにどきどきできたし、ほぼ一気に読み終えた。小説に若干飢えていたという面を抜きにしても、控えめに言って、面白かったと思う。 当時二十代でよく分からなかった部分で、今回分かった部分もあった。三十代半ばを迎え、受け入れなければならない感情、諦めなければ前に進めない分岐点、などなど。 ただし、ある部分においては「もういいよ」と思える部分もあった。そういうコトを問題にするのは、もう飽きた。 世界観のある作品に浸りたかった。それも気軽に。だからこの小説を本棚から引っ張りだした。何年かたって、同じような気分になった時、また同じ小説を引っ張り出すだろうか。だとしたら、その時何を思うのか。 ある年代にならなければ絶対に分からない部分。 そういうものが増えていくのは……果たしていいことなのかどうか自分じゃ分からない。おそらく死ぬまで分からないのではないかと思う。 機動戦士ガンダム テレビ番組・ビデオ(鑑賞02年5月26日) ちょっとした仕事の関係で、再観。初見は高校の頃。確か最初の再放送だった。 昔ハマった名作アニメ。懐かしくもあり、また、結構細かいことを覚えている自分に驚きもした。 情けない系の主人公の元祖・アムロ。(巨人の星の飛雄馬も情けない主人公という話もあるが)全作を見直してみて、結構前半部は普通のロボットアニメを引きずっていることに驚いた。意味もないのにやたら合体したりとかね。ただ、それまでのロボットアニメと決定的に違うのは、これが連ドラ的要素を持っているところ。例えば3話前に当話の伏線を張っていたりとか。 前半部はひたすら、ゆくりと話しが流れ、後半は無茶苦茶加速する。マニアは前半が好きらしいのだけれど、ドラマ的には断然後半が面白い。そういう意味でも、全話を通してひとつのドラマになっている。ただ、今回見返して思ったのは…… これ、果たして最初っから制作者の思惑としてこうするつもりだったのだろうか。どうも、(制作者の意図を離れて)奇跡的にストーリーが面白くなってしまったという印象が残ってしまった。それはそれで、モチロン素晴らしいことなのだけれど。 朝日のような夕日を連れて91 演劇・NHK衛生放送(鑑賞02年4月8日) 第三舞台 ある意味、自分の演劇の原点・第三舞台。 91年は、それが色褪せ始めた頃。面白いシーンは幾つかある。ただし、全般には映像で観て面白いモノとは言いがたい。 かっこよさであったり、勢いであったり、語りであったり、そのディティールを感じるコトは難しいコトではない。が、それでも物足りなさが残る。そして今回感じてしまったのは…… おそらく、今これと同じものを劇場で観たとしても、同じように「物足りなく」感じてしまうだろうな、ということ。 隠し砦の三悪人 映画・ビデオ(鑑賞02年2月5日) 監督 黒澤明/出演 三船敏郎 他 まずはタイトルと中身にギャップがあって、拍子抜け。 百姓のトンマなコンビは悪くないが、全体的なストーリーは、戦に負けた侍(三船敏郎)が、生き残った姫君を、敵の目をかいくぐって安全な場所まで送り届ける、というもの。娯楽性も笑いも、もうひとつ。 男はつらいよ 私の寅さん 映画・テレビ放送(鑑賞02年2月4日) 監督 山田洋次/出演 渥美清 岸恵子 他 久々の寅さん。 シリーズは殆ど全部観てるのだけれど、これは初見。久々に堪能した。 山田洋次のうまさが目立つ。細かいエピソードのくみ上げかたが非常にカチっとはまっていて気持ちよい。寅さんシリーズは、実は職人芸の宝庫なのだ。 ストーリー的には、マドンナとの出会いが異色。出会った途端に喧嘩するパターン。 岸恵子の魅力はイマイチ。それを除けば非常に悪くない映画。 それにしても……寅さんのマドンナは誰がやっても同じようなキャラ。当たり前といえば当たり前か。 LOVER SOUL 演劇・ビデオ(鑑賞02年2月1日) 泪目銀座 病院コメディ。コメデイながら、明日をも知れぬ重症癌患者をストレートに扱っている。 明日をも知れぬ男と看護婦の恋。今日死んだハズの患者の幽霊。病院が世界の全てである患者同士の友情。……題材の選び方もストレート。その志はいい。 『生死』を扱いながらも、きちんと笑いを取る手腕は見事なり。ただし、「話作り」に志の低さを感じる。「こんなモンでお客さんは満足してくれるだろ」的な製作者の意図が見える。まあ、実際、満足しているのかもしれないが。 何箇所か挿入されるサイレントの風景スケッチ。これがなくても成立していれば……と思う。安易な手法が目立って、それが全体の印象を『凄くない』モノにしている。役者は渡辺いっけいの一人勝ち。あざとい芝居をしていてもなぜか泰然自若としている。 とまあ、ケチはいろいろつけられるんだけれど、この手の芝居をここまでやれるヒトは現在かなり少ないと思う。ワタシなんかが言うコトじゃないけど、(言うのも不遜だけど)頑張っていただきたい。演劇界のためにも。 十二人の優しい日本人』 映画・ビデオ(鑑賞02年1月30日) 中原俊監督 『怒れる……』を観ていて、見たくなった。やはり再観。 初見の時、最後の方で嫌な気持ちになったことを思い出した。あの、相島一之演じる陪審員2号は、私だからだ。(すいません、勝手な思い込みですが)理屈っぽくて弁もそれなりに立つ。でも、実は行動の源にはちゃんと感情的なものがある。こういう人は他人から嫌われる。それを客観的に見せられるのは、やっぱりいい気分ではないのだった。 『有罪→無罪』の原作(怒れる)を、『無罪→有罪→無罪』としたのは、おそらく正解。でも、その完成度においては、原作には及ばない。三谷幸喜の才能は、原作に負けない人物像を『日本人』で描ききったところ。モチロン、三谷氏もタダモノではないのだった、当たり前だけど。悔しい。 十二人の怒れる男 映画・ビデオ(鑑賞1月29日) 再観。見返して、懐かしいヤツらに再会した気分になる。キャラクターの立て方として、非常に参考になる映画。 「誰からも注目されない、誰にも顧みられない」これはとても寂しいこと。こういう情的に理解されやすいコトを人間の行動線として、なぜそうしたのかの理由とする部分がうまいと思った。例え、事件推理の理屈付けには多少無理があったとしても。 舞台を映画にするとき、ここまで徹底して室外を出さない方が、やはり面白くなる気がする。ニール・サイモンの映画は、主舞台となる空間以外の場面が欠点。 質屋 NHK FMラジオドラマ(02年1月26日) じんのひろあき脚本 若者の夢の実現のため、という理由であれば金目の物でなくても質草としてお金を貸してしまうという、変わった質屋さんのお話。 ある日父親が受験生の長男に言う。 「うちにはお前を大学にやる金はない。だから、どうしても大学へ行きたければ質草を持ってこい」 さて困った長男なのだが…… 質屋を継ぐことになっている、しっかりモノの次男がポイント。 メタ・ラジオドラマ。どこまで真実か分からないが、質屋を取材に行った『じんのひろあき』自身を主人公に、風変わりな質屋を取材したドキュメント仕立てなドラマ。斬新と言えば斬新。ちきしょー、結構面白かったぜ、じんのさん。 ラヂオの時間 映画・ビデオ(鑑賞02年1月26日) 映画館で一度観ているのだが、ちょっと故あって再観。 よく出来ている映画。観ているモノの心の揺さぶり方がうまい。三谷氏の映像作品の中では、やはりピカイチだろう。なぜ『みんなのいえ』がつまらなかったのか、ちょっと考え込んでしまう。少なくともこの作品では、三谷氏はきちんと映像向きの作品作りをして、それを成功させている。 中途で、鈴木京香演じる作家が、スタジオを占拠するくだり、ハナシの流れの中で、やはり一歩早い印象。原作の舞台通り、宇宙の回想シーンが終わった後にあれがあった方がいいと思った。原作では収録中の出来事だから、作家の主張は「撮りなおしてください」それを、映画では「生放送」中の出来事って設定にしちゃったための苦しい改稿。こういうところに書き直しの難しさがあるのだ。 そこからクライマックスまでの盛り上げ方。ちょっと説明過多。スピード感を殺しているのが惜しい。 OO7 ゴールドフィンガー 映画・ビデオ(鑑賞02年1月23日) 懲りずに2本目を観る。ワタシだって楽しみ方を知りたいのだ。 金の密売人・ゴールドフィンガーとOO7の対決。話のミソは、アメリカ保有の金を核被爆させ、価格を暴騰させるという、ゴールドフィンガー氏の狙い。これ、確かゴルゴ13にも同じネタがあったけど、どっちが先なんだろう。 敵方の女を簡単に寝返らせてしまうジェームス・ボンド。まるで島耕作。 お話としてのデフォルメが笑える。例えば……寝返らせた女と寝ているボンド。飲み物を取りに行ったところで敵に襲われ、敢え無く気絶させられる。(なぜか殺されはしない)気がつくと、さっき寝ていた女が、全身金箔を塗られて殺されていた。全身に金箔を塗られると、皮膚呼吸が出来なくなって死んでしまうからだ。うーん、何故、そんな手の込んだことを? 皮膚呼吸云々以前に、銃で撃っちゃえばすむことでは? お話のセオリーとして、スーパーヒーローは、必ず一度は敵に捕まるらしい。でも、やはり殺されない。無駄に生かしておくから最後には計画をおじゃんにされてしまうのだ。なんて間抜けなヤツら。てなワケで、やっぱりよく分からなかったのだった。懲りずに次も観る。 猿の惑星 映画・ビデオ(鑑賞02年1月23日) リ・イマジネーションバージョン。あまりに鮮やかだった旧作に比べて『落ち』は奇妙に思えたが、どうもこの方が原作小説には近いらしい。 オープニングシーンは宇宙船を操縦している猿。おやおや新作ではいきなり登場かと思ったら、(旧作では、最初の猿が出てくるまで30分近くかかる)これは宇宙船内で飼われている猿のトレーニングシーン。これがなかなか良いアイディア。この映画で、面白かったのは、このシーンと最後にもう一度出てくる部分のみ。宇宙船で現れたそいつを聖書の猿と間違える部分は、ちょっいと膝を打たされた。 全般にストーリーの流れが雑。特に、猿たちが奇妙に人間を嫌っていて、奇妙な罵声を飛ばすところなど、なんか『記号』すぎて、わかり易いが安っぽい。観客がストーリーを知ってるコトが前提で作られている印象。いや、そう作らざるを得なかったと言うべきか。 昨日鳴る鐘の音 演劇(鑑賞02年1月20日) 劇団インターセプト若手公演(困セプト零号機) 出演 守谷裕樹 他 作家の辻井さんにとって、若かりし頃の過ちのような作品。手法を持たずに書いている印象。だから、非常に理解されずらいだろうなあと思ってしまった。誰もが(ホンも役者も演出も)お客との橋渡しをしておらず、お客の困惑が観ているワタシにも伝わってきた。 会話って何だろう。舞台の語りってなんだろう。こういう芝居を観てると考え込んでしまう。演劇的な派手な演技。そこにいることが自然な演技。果たして両立は可能なのか。突出した才能ある役者であれば可能かもしれないが、普通の役者が、技術をもってそれを獲得することは可能なのか。 守谷氏はよくなかった。この作品(役)の場合はもっと作品内部に向かって閉じているべき。 OO7・ドクター・ノオ 映画・ビデオ(鑑賞・02年1月17日) OO7の第1作。スパイモノの原点? 水戸黄門的に、作りに規則がある映画。多分、鑑賞のし方にも。 (なぜか子供の頃から縁がなく、今回が全作通じて初見なのであった。故にその鑑賞の仕方が分からないまま、素朴に観た。その感想なので……どうかファンの方は怒らないでくださいね) 「ダブルオーは殺しのライセンス」とか、今聞くとちょっと笑ってしまう。ドラマ的には何の意味もなくボンドガールは出てくる。(いなくても話は余裕で成立する) スーパーヒーローのクセになぜか捕まるボンド。で、なぜか殺されない。「なぜ殺さないんだ」と、敵側に感情移入してしまう。案の定逃げられてしまって、呆気なく組織は壊滅。呆れるくらいドクター・ノオの組織は脆弱。 諜報部員は、なぜか(裸になる危険を侵してまで)敵の美人工作員と寝る。これも鉄則か。 マダムと泥棒 映画・ビデオ(鑑賞・02年1月17日) アレック・ギネス 他 良く出来た脚本。途中途中でトロい部分もあるが、伏線がよく効いている。例えば冒頭の宇宙人の話。結末にうまくつながっていて、こういうのは気持ちよい。 確かにマダムと泥棒のお話だし、原題の通り、レディーキラーズのお話なのだが、イギリスっぽい。泥棒のクセにどっかジェントルマン。 ミソは、マダムを殺さなきゃならない状況になりながら、無防備な老婆を誰も殺せないところ。こういう人間の不本意でも守ってしまう性癖(?)のような制約は理解されやすい。泥棒のクセに、マダム(老婆)を殺すのはみんな小心者的に嫌がるのだった。イギリス人が観たらより面白いかも。結構おススメの一本。 象を洗う エッセイ・岩波書店 佐藤正午著(読了02年1月16日) 「ありのすさび」に続く、佐藤正午の生活がにじみ出ているエッセイ。 ちょっと粘着質。しょーもないゲームに滅茶苦茶熱中したり。粘り腰な部分は俺以上。 こういう生活、出来る? 出来るなら多分作家になれる。努力家。で、かつ粘着質。 30代後半から40台前半までの10年ほどが滅茶苦茶な順番で入っている。 途中に意味なく挟まれている短い小説が、なんかいい。 マルタの鷹 邦画・ビデオ(鑑賞02年1月16日) ハンフリー・ボガード 他 ダイアローグ中心の映画。ハードボイルドだからか、全体の半分はサム・スペードの台詞。 込み入った設定のワリに驚きの真実などもなく、淡々と流れる時間。気持ち悪くはないが、どこかモノ足りないのも事実。なぜ、カサブランカは面白かったのかと考え込んでしまう。 何が嘘で何が真実なのか。それを見抜く力が観る側にとってもポイントだと思うのだが、嘘が多すぎるから込み入った話に感じてしまう。 「探偵は相棒を殺されたら必ず犯人をあげる」どこか白々しい。そこに依存して話をつくるなら、(ハードボイルドっぽくはあるが)他にやりようがあるはず。 相棒の奥さんと出来てる話は、なんか意味不明。 くすくすげらげらうっふっふ 演劇(鑑賞02年1月14日) 演劇集団・円 狂言が原作の子供用演劇。楽しめたし、『笑い』については一見の価値があった。が、やはりどこか不満。 その不満の正体は良くわからない。物語そのもののおかしみよりも役者の芸で笑わせていたせいか。 七人の侍 邦画・ビデオ(鑑賞 02年1月10日) 監督 黒澤明/出演 三船敏郎 他 映画コラムの影響もあって、今年は是非黒澤作品を全部見てやろうともくろむしゅさい。その第一弾。実は初見です。シナリオなんてものを学んでいると、いろいろな所で黒澤作品がテキストに使われているのですが、中でも『七人の侍』は頻度が一番じゃないかな。で、なんだか勿体ない気がして今までビデオもシナリオにも手をつけなかったんですが、満を持して観ることにしました。 3時間を超える大作。しかも録音のせいか非常に声が聞き取りづらい。にも関わらず、一気に見させられちゃいましたね。現代の映画に比べると、非常に説明が少ないというか、解説的なセリフがほとんどない。悪く言えば観客にとって不親切。だけど、分からないセリフがあっても気にならないです。ストーリーは分かるから。これちょっとだけ作家的な意見で言えば、「観客に深く説明すべき事柄と説明しなくてもいい事柄の『見極め』がうまい」ってことだと思うのね。経験の少ない作家(例えばワタシ)は良くこの見極めを失敗します。そんなことは説明せんでも分かる事をくどくど説明したり、逆に説明しなきゃお客さんがストーリーを見失うことを説明しなかったり。またまたちょっとだけ作家的に説明すると、シナリオというモノは、「本質的に分かりにくいことは分かりやすく」「本質的に分かりやすいことは意味深げに」「本質的に意味深いことは詩的に」説明するのがよしとされてるワケですが、黒澤映画のシナリオは、そのあたりが実に巧みだというワケです。 あと思うのは、実は黒澤作品の凄さって『笑い』にある気がするんですが……そうは思いません? お客の楽しませ方を本当に良く知ってる方です。数多いるその後の日本の映画監督は、その世界観ですとか作風を真似る事はできても、この『笑い』の部分を真似できなかったんじゃないかとすら思ってしまう。どうも昨今の日本映画って、暗いモンでないと世界に認められないと思い込んでる風潮がまだ続いているような気も……するのです。そんなことないスかね? 邦画の場合、昔のモノ観た方が『笑い』的に優れている気がします。黒澤じゃなくても、例えば『百万両の壺』とかね。 三船敏郎に改めて脱帽。なんかワタシ脱帽ばかりしてますが、やっぱりこの人は凄いです。特にこの頃は、三船敏郎の中でも特別輝いていた気がします。ワタシにとって邦画界の両横綱は松田優作と三船敏郎。でも『笑い』もとれるという意味では三船の方が上かもね。 幸せの黄色いハンカチ 邦画・ビデオ(鑑賞 02年1月7日) 監督 山田洋次/出演 高倉健 他 再見。初見はいつのことだかもう忘れてしまった。故あって今回改めて見直して、山田洋次作品だと気づいてビックリ。まあ、松竹だし、倍賞千恵子だし、渥美清も出てるし……よくよく考えてみればそれ以外あり得ないのだけど。しかしまあ、人情モノやらせるとうまいですねぇ、山田洋次。 ストーリーラインはほぼ覚えてた通りでした。あまりに有名な作品なので詳しくは割愛するけど、まあ一言で言えば、水戸黄門型ドラマ。結末は見てれば誰でも分かる。だけど、それでもハラハラどきどきさせる手腕は流石というところ。今回見直して気づいたのは、そのストーリーの軸となる問いかけ(果たして黄色いハンカチは下がっているのか)がかなり終盤になって提示されてること。じゃ、それまで映画はどうやって観客を引っ張っていたのか。てことはやっぱりこの映画、ロードムービーなんですね。旅先で知り合った三人(武田鉄也、桃井かおり、高倉健)が、共に旅をする物語。お客の興味はむしろ、旅の行く末(果たして武田鉄也は桃井かおりをクドけるのか)とか、謎のオジさん高倉健は何者で、なぜ旅をしているのか、とかの方なワケですね。このへん、うまいですねぇ。一番大切な事は最後まで隠しておく。 実は健さん、あまり好きじゃないんです。……と言うと、大勢の方に叱られると思うんですが、でも実際そうだから仕方がない。でもさ、古くは『海へ』とか、『ブラックレイン』とか、最近だと『鉄道員(ぽっぽや)』とか、健さんが良かったことないんです、ワタシにとっては。で、なぜみんなはそう思わないのかが不思議だったりするワケでして、だって、ブラックレインは凄かったけど、それは松田優作が凄かったワケで、比べて健さんは『うーん……』てなワケなのに、誰も健さんの悪口は言わない。ワタシてっきり日本の映画界で健さんの悪口はタブーなのかと思ってました。(今でも少しそう思っている。まあ、ここは主に演劇のサイトだし、あまり映画に詳しくないしゅさいが書いてることですのでどうぞ大目に見てやってくださいまし) で、前置きが長くなりましたが、この映画の健さんはいいです。あまり上手な役者さんとは言えませんが、華はあるし、目は引きます。健さんの時代はこのあたりまでだったんじゃないかな、なんて思ってしまいました。 武田鉄也と桃井かおりが若い。あたりまえですが、若い。でも若いけど二人とも今とあんまり変わらないです。凄いと言えば凄い。今よりちょっと太めの桃井かおりは結構色っぽいです。マル。 |