スタジアムから喝采が聞こえる

藤島大(洋泉社)

〜オリジナルな語り口を持つ作家〜

酒に満ちた紀行文は、まとまらないけど軽いレビューで。

スタジアムから喝采が聞こえる、って良いタイトルだ。
その状況をイメージするとふっとどこかの競技場の外にいるような
気になる。

書き下ろしが3点と、ナンバーに掲載された作品が5点。

「藤島節」というらしい。
がつっと咬んでくる文体。戦わないと読めない。
しかし、癖になる、かも知れない。私の乏しいイメージから
例えを拾えば、ラフロイグ(癖の強いウィスキー)に近いかも。
書き下ろしの3点、決して読みやすくない。
コラージュっぽく書きたいことを重ねているような印象。
ラグビーの奴なんて、素人には最初すごく読みづらい。人名たくさん
出てくるし。
でも読んじゃう。なんだろうこれ?
「映画好き」というところからふと思う。
カット割り。この言葉、結構この文体に似合うような気になった。
映画好きでもない人間の単純な思いつきだけど。
文体というのは不思議だ。個性的な文体は理屈を超える。
優等生的にいえばいろんな赤が入るけど、しかしそれでは魅力が
消えてしまう。
手出しができない。
どういうところからこういう文体が生まれてきたのかな。
やっぱり天性なのかな。
ちょっとだけざらつきが辺見庸に似ている。

「オールアウト」の中竹竜二と共にイギリス遠征に行ったときの
話が出てきて驚く。別に不思議じゃなかった。コーチだもの。
忘れていた。
中竹竜二は、かっこいい武士のようになっていた。
二冊併せて読むとより楽しめます。

本好きの私にはやはり本屋巡りの一文が楽しい。
スポーツ本を漁るわけではないけれど、10年ぶりに早稲田の古本屋に
行って、メルシーでラーメンを食おうと決意。
いつになることやら。
4月には国立に花見に行って増田書店に寄ろう。(これ定番)
と思ったけど、今年の4月は無理か…本番だもの。桜、遅く咲け。
というような、ふらふらとした思いを誘う楽しさがある。

そして、伊達のフレンチオープン4強の時の文を読んで思い出す。
(この文章には覚えがあった。ナンバーで読んでたみたい)
あのころの伊達公子は本当にどきどきする試合をした。

でも一番印象的なのは、フォアマンとホリフィールドの試合のときの
筆者の状態かな。それこそ視覚的に思い浮かぶ情景。映像的。

藤島大にはまったのかというと、ラフロイグは大好きだけど、
彼に関しては保留つき。まだ戦わなきゃ読めない部分があるから。
でも、遠からず全著書を読んでみようかなとは思ってる。
刺激的なことは間違いない。

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